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名作朗読原稿まとめ1(青空文庫より抜粋)

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ボイスサンプルを録音したり、表現や発声・滑舌の練習に使えそうな文章を、名作小説から抜粋してまとめてみました。

物語の全体像を把握してから朗読できるよう、全て短編作品から抽出しています。
ぜひ元の小説も読んでみてくださいね。
青空文庫さんのサイトはこちらです。
青空文庫 Aozora Bunko

ちなみに、このような朗読活動をなさっている方もいらっしゃいます。
aozoraroudoku.jp
技術面で一定の基準をクリアした方が掲載対象のようですので、アクセントやイントネーション、表現の参考になるのではないでしょうか。

また、文章の末の「ひとくちアドバイス」にて、私がこの文章を選んだ理由や朗読をする際のアドバイス等をお話ししています。
そちらも併せて参考にしてみてくださいね。


それでは、名文の抜粋をご紹介します。
以下に挙げるものは全て名作として今日まで読み継がれている作品ですので、物語としての面白さは言わずもがな、個性があるのに均整のとれた文章で、読んでいても聞いていても心地の良いものばかりです。
ぜひ声に出しながら読んでみてください!


芥川龍之介「蜘蛛の糸」より。

ある日の事でございます。御釈迦様(おしゃかさま)は極楽の蓮池(はすいけ)のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色(きんいろ)の蕊(ずい)からは、何とも云えない好(よ)い匂いが、絶間なくあたりへ溢れて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう。
 やがて御釈迦様はその池のふちに御佇(おたたず)みになって、水の面(おもて)を蔽(おお)っている蓮の葉の間から、ふと下の容子(ようす)を御覧になりました。この極楽の蓮池の下は、丁度地獄の底に当って居りますから、水晶のような水を透き徹して、三途(さんず)の河や針の山の景色が、丁度覗(のぞ)き眼鏡を見るように、はっきりと見えるのでございます。

ひとくちアドバイスはこちら→*1(ページ下部へ飛びます)


梶井基次郎「檸檬」より。

いったい私はあの檸檬(れもん)が好きだ。レモンエロウの絵具をチューブから搾り出して固めたようなあの単純な色も、それからあの丈の詰まった紡錘形(ぼうすいけい)の恰好(かっこう)も。
――結局私はそれを一つだけ買うことにした。それからの私はどこへどう歩いたのだろう。私は長い間街を歩いていた。始終私の心を圧(おさ)えつけていた不吉な塊がそれを握った瞬間からいくらか弛(ゆる)んで来たとみえて、私は街の上で非常に幸福であった。あんなに執拗(しつこ)かった憂鬱が、そんなものの一顆(いっか)で紛らされる――あるいは不審なことが、逆説的なほんとうであった。それにしても心というやつはなんという不可思議なやつだろう。

ひとくちアドバイスはこちら→*2(ページ下部へ飛びます)


「まざあ・ぐうす」北原白秋訳「日本の子供たちに はしがき」より

 お母さんがちょうのマザア・グウスはきれいな青い空の上に住んでいて、大きな美しいがちょうの背中にのってその空を翔(か)けったり、月の世界の人たちのつい近くをひょうひょうと雪のようにあかるくとんでいるのだそうです。マザア・グウスのおばあさんがそのがちょうの白い羽根をむしると、その羽根がやはり雪のようにひらひらと、地の上に舞(も)うてきて、おちる、すぐにその一つ一つが白い紙になって、その紙には子供たちのなによりよろこぶ子供のお唄が書いてあるので、イギリスの子供たちのお母さんがたはこれを子供たちにいつも読んできかしてくだすったのだそうです。

ひとくちアドバイスはこちら→*3(ページ下部へ飛びます)


中島敦「文字禍」より。

文字の霊などというものが、一体、あるものか、どうか。
 アッシリヤ人は無数の精霊を知っている。夜、闇の中を跳梁(ちょうりょう)するリル、その雌(めす)のリリツ、疫病(えきびょう)をふり撒(ま)くナムタル、死者の霊エティンム、誘拐者ラバス等など、数知れぬ悪霊共がアッシリヤの空に充ち満ちている。しかし、文字の精霊については、まだ誰も聞いたことがない。

ひとくちアドバイスはこちら→*4(ページ下部へ飛びます)


江戸川乱歩「赤い部屋」より。

私は、自分では確かに正気の積(つも)りでいますし、人も亦(また)その様に取扱って呉(く)れていますけれど、真実正気なのかどうか分りません。狂人かも知れません。それ程でないとしても、何かの精神病者という様なものかも知れません。兎に角、私という人間は、不思議な程この世の中がつまらないのです。生きているという事が、もうもう退屈で退屈で仕様がないのです。

ひとくちアドバイスはこちら→*5(ページ下部へ飛びます)


今回は5つの作品をご紹介しました。
今後も増やしていく予定ですので、楽しみにお待ちくださいね!

(ひとくちアドバイス)

*1:朗読の定番「蜘蛛の糸」です。朝の極楽の長閑で美しい情景描写を、あなたの声で更に鮮やかに表現してみましょう! 「覗き眼鏡」というのは「箱眼鏡」とも呼ばれる、昔ながらの「水中眼鏡」のようなものだと思われます。物語のカメラアングルが切り替わっていくのが、声でも表現できるとベストですね!

*2:こちらも教科書で読んだことのある方も多いと思われる名作です。わたしはこの文章が物語の核心部分だと思って抜粋しましたが、お好みで別の部分を朗読してみてもいいかもしれませんね。全体としては苦しい雰囲気の作品なのですが、ここの部分では「一抹の晴れやかさ」のようなものが表現できると素敵だと思います。

*3:優しげで幻想的な情景の描かれるこの文章。子供に向けられた文章なので、分かりやすく、あたたかい声で表現できると良いですね!「マザー・グース」とは、本文にもありますが、イギリスに伝わる童謡です。また、北原白秋は童話や童謡など、子供たちのための作品を多く発表した作家でもあります。マザー・グースはちょっとナンセンスというか突飛というか、不思議な内容の唄が多いためなのか、この文章も魔法のような不思議な世界観が広がっているように思います。

*4:「山月記」で有名な中島敦による短編「文字禍」。その物語の導入部分です。大部分は精霊の名前の羅列なのですが、読み手も聞き手も「どんな精霊なのかな」と思い浮かべながら読めたら楽しいのではないかと抜粋してみました。滑舌の練習にも良いと思います。

*5:「正気なのか分からない」というこの「ヤバそうな感じ」を前面にだして演じも良いですし、淡々とした語り口のなかに滲ませるのも良いかもしれません。 小説を読むとわかりますが、これはこれから自分のしてきたことを話そうという導入の部分ですから、危険をにおわせるような、他人の興味をひくような魅力的な雰囲気が欲しいですね! また、小説の結末を知ってから読むと、少し表現が違ってくると思いますので、ぜひ読んでみてください。

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